[ March.27-28. 2010 ]
ロシア、ワン・ツー・フィニッシュで終えたティエ国際。エフゲニア・カナエバはロンドン五輪まで女王の座は誰にも譲らないだろう。昨年の世界選手権三重大会優勝から更に進歩した演技内容。複雑なフォーメーションに手具操作の巧みさ・・・!加えて表現力にも磨きがかかっている。カナエバは何処まで進化していくのだろう。
2位につけた、ダリア・デミトリエバ(ロシア)は一昨年デルギナカップとイオンカップでジュニア優勝した選手。指導者はオクサナ・コスティナやナタリア・リプコフスカヤを育てたオルガ・ブヤノバ。ロシアは選手に留まらず指導者層も厚い。今回ブヤノバと直接話をする機会があり、今現在はモスクワにいるとのこと。世界選手権開催に向けてデミトリエバと二人三脚、極東イルクーツクで隔年で開催されるオクサナ・コスティナ・メモリアルはローテーション的には今年だが、来年に繰り越しとなったようだ。
ロシアはロンドン五輪、カナエバに続く2番手争いは熾烈の様相。三重大会で銀メダルに輝いたダリア・コンダコバもワールドカップシリーズで好成績。ふたりのダリア姓から目が離せなくなりそうだ。
今回のティエ国際でのデミトリエバのカメラマン及び会場に駆けつけたファンの評価は高い。ピボットの芯の確実性や回転のバリエーションはカナエバを凌いでいる感さえある。また、振り上げた方の足・・・足首を下駄を履く?鷹の爪のように?をコミカルに切り替えながらピボットを、それも軸のブレのない完成度でバリエーションをつけるなど構成自体にオリジナル性が見られる。
ただし・・・デミトリエバの演技構成はピボットが圧巻なだけにそれ以外の難度要素が記憶に薄い感があり、カナエバの難度のバリエーションと手具操作が表現の中に情感豊に組み込まれた、その更なる高みを目指す姿勢には遠く及ばない。キャリアの差と言えばそれまでだが、カナエバはこれまでのロシアチャンピオンとも一線を画すまでの存在に成長した。
優雅で誤摩化しのない難度構成が美しかった・・・バルスコバ。機敏で個性的な動きのチャシナ、柔軟性とアイドル性で新体操世界を席巻したカナエバ。いずれ劣らぬ名花だが、カナエバは歴代チャンピオンを輩出し続ける強国ロシアにあって、その名を汚すことのなく『何処まで美しくなるのだろう』という新体操の永遠のテーマを受け継ぐファムファタル。その地位は揺るぎなさそうだ。
3位にはイリーナ・リセンソン(イスラエル)。個人総合4種目終了直後、足を痛めたようで表彰式に姿を見せなかった。変わりに急遽コーチが表彰台に上がり、関係者の喝采を浴びる場面も。翌日の種目別には出場すべく会場入りしたが、やはりドクターストップがかかり種目別は棄権。
今回はベラルーシとブルガリアはエース級は別大会にエントリー。特にブルガリアはまったくの無明選手ボヤンカ・アンゲロバをティエ国際に送り込んでいた。ミスが相次ぎ成績は揮わなかったが、手具操作のリスクの高さには眼を見張るものがあった。あれを完璧にマスターしたら・・・とブルガリアの底力を見る心地がして、昨年三重大会で種目別表彰台に上がったシルビア・ミテバの顔を思い出した。
スタイルが良いとか柔軟性がスゴい!とか、そういう際立った身体能力者のみが表彰台に上がる訳ではない。新体操は曲・手具・動きとの一体感が基本。オリンピック毎に改訂されるルールに翻弄され続けながらも『道を切り開く』努力が実を結ぶ・・・継続は力!まさにそこに集約されるということなのだろう。
しかしながら点数を稼ぐ目的の付け焼き刃な難度や手具操作は論外の感がある。しかも表情も然ることながらルールに則り動けば良いということでもなさそうだ。動きと動きの間、次の動きに至る「身体で曲のイメージに沿った感情表現をする」それも訴える力量が問われていると今回の取材を通して強く感じた。
イスラエルの2番手ネタ・リフキンは基本無表情な選手だが、曲解釈が身体に染み込んだ演技。観客に訴えて充分な『踊る』能力を高めていた。
個性は異なるが、昨年で引退した井上実美が脳裏を過った。決して器用な選手ではなかったと聞く。だが、一曲毎に心を込めて「踊り」「表現する」その精神性は次世代の日本国内選手に受け継いでもらいたい。
バックルジャンプをキレイに飛ぼうとも、ふたつ折れの柔軟性を持とうとも、曲のイメージを訴える『演技者』としての一面も磨いていってこそ。
身体能力ありきのロシアにあって・・・カナエバの演技者としての丁寧さや感情移入を『動き』で表現するその巧みさ、何処まで身体で美しさを表現するか・・・を見た気がした。
カナエバは更に進化し続けるだろう。
文:小林 隆子
[追記]
ティエ国際パンフレットプレゼントは予定数に達しました。ありがとうございました。
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